芽生えて育って②


 今日は休日なので、どんどんゲームを進めていく。

 今回ようやくビートとマリィに出会えた。マリィも相棒のポケモンも可愛い。モルペコって言うんだ、へえ?
 ビートはちょっと生意気だけど……、またそこが可愛らしい。

 あと、前々から思ってたけど、ダンデの弟がとても可愛い。ホップ、いい子。前向きで明るくて、ダンデをとても尊敬していて、「今度はオレがチャンピオンになるんだぞ!」と頑張ってる姿がとてもいい。まあ、バトルは私が勝つんだけど……。この子と一緒に旅立てよかったよ。

 それから忘れちゃいけないのが「ブラックナイト」。大昔に起こった大災害。黒い渦が発生し、ポケモンが巨大化して暴れてガラル地方が滅ぼされそうになったんだとか。

 それで、ブラックナイトを鎮めたのが剣と盾を持った若者、つまり勇者だった……らしい。

 うーん、多分これが今回悪の組織に利用されたりするのかな? ダンデと初めて出会った時に「ムゲンダイナ」がどうとか言ってた気がする。ムゲンダイナがブラックナイトと関係あるのね、きっと。

 ああ、そうそう。彼の幼馴染みであるソニアの印象だけど、活発で面倒見のいいギャルって感じでびっくりした。これで博士の助手もしてるのか。賢くて可愛いとか無敵では……?

 うっかり「ソニアみたいな幼馴染みがいたら惚れそう……好き……」とか口走ってしまい、ダンデがまた宇宙を背景にした猫の顔をしていた。なんだよ、そんな目で見ないでよ……。

 エンジンシティからガラル鉱山へ行き、ターフタウンへ向かう。手持ちを育ててレベルを上げ、私はくさタイプジムへ挑んだ。

 結果はもちろん――。

「ヤローに勝ったー!! バッジ1個目!」

 ダンデは私の隣で腕を組んで「いいバトルだった」と褒めてくれた。

「ダイマックス初めてやったけど、あれはすごいね。大迫力。こっちもテンションあがる」

 ダイマックスは3ターンだけしか持続しないし、使える技も変わるんだね。使いどころ、悩むね。

 今の私の手持ちはこんな感じ。

・ヒバニー→ラビフット
・ワンパチ
・ニャース(ガラルのすがた)
・ココガラ→アオガラス

 たくさんポケモンは捕まえたけど、とりあえず4匹育ててる。くさタイプのジムだから、ほのおとひこうを入れて弱点タイプを徹底的に突いていこうという作戦だった。結果的に余裕でクリアできたと思う。序盤だし、躓いてられないね。

 あ、ワンパチを育てているのはソニアのワンパチのせい。丸っこいフォルムと「イヌヌワン」の鳴き声がキュートすぎて心臓を撃ち抜かれてしまったのだ。【ほっぺすりすり】って技、あざといと思います!

 ちなみにニャースを手持ちに加えたのは、カントーとまったく姿が違っていたのが衝撃的だったから。最初にエンカウントした時、驚きすぎてダンデの腕を何回もバンバン叩いてしまった。そのくらい興奮していた。

 ダンデ曰く、住んでいる環境に適応するために新しい姿を獲得していったのだそうで、これをリージョンフォームというらしい。

「アローラ地方のニャースもまた違うぞ。調べてみるといい」
「えっ、ホント? わ、私の知ってるニャースと違う!!」

 スマホで調べたらアローラのニャースが出てきた! カントーと色が違う。しかもタイプがあくなんだ? あ、ガラルの方ははがねタイプだ。

 ニャースの他にもリージョンフォームを持つポケモンは結構いるらしい。

「へえー、ポケモンって面白いね!」
「そうだろ? ポケモンは面白い!」

 お互い小さな子どもみたいにはしゃいでしまった。

「えー、もっとたくさん捕まえたくなってきた……。けど、ジムチャレンジも続けないとね。今日中にみずタイプのジムリーダーに挑戦だ!」
「ルリナも強いぜ。、頑張れよ」

 ダンデからの応援を受け、私はバウタウンへと向かうのだった。


***


 今日は29日。会社は年末年始休暇に入っている。ゲームばかりするわけにもいかないのだ。

「ねえ、ダンデ。日本にはさ、年越しというものがあるんだよ」
「年越し?」
「うん。新しい1年を迎えるための行事? みたいな? 日本は12月31日が1年の終わりで、1月1日を新しい1年の始まりって考えているんだ。お正月の準備も――って、多分あっちの世界にもあるよね? 言葉は違うだけで」

 ダンデは合点がいったとでも言うように大きくうなずいた。

「ニューイヤーズイブか! オショウガツは分からないが、確かに家族や友人と集まってパーティーを開く文化はあったぜ!」

 もっとも、チャンピオンになってからはあちこちのイベントに引っ張りだこだったらしい。うん、そうだよね。チャンピオンはそういうの出るイメージあったわ。

「それでね。日本では年越し――新しい年を迎えるために、この時期は大掃除をするわけ」
「掃除? いつもやっていることを?」
「そう。1年で溜まった埃や煤を払って、神様を迎えるの。それが大掃除、らしい。あ、詳しいことはネットで調べて」

 今年はダンデが常に掃除をしてくれているから、あまり綺麗にするところはなさそうだ。とはいえ、こういう行事? 風習? ひとり暮らしでも大事にしていきたいよね。

「毎日ダンデが掃除してくれてはいるけど、細かい所とか、普段ちょっと疎かになっちゃう隅や隙間なんかを徹底的にやっていこうと思う!」
「なるほど、だからこの間掃除道具を買ってきたんだな……」

 シンクの汚れを取るスプレーとか、メラミンスポンジとか、洗濯槽クリーナーとかね。ええ、買ってきましたとも。

「私、まず自分が使っている寝室を掃除するからさ。ダンデは、まずキッチンやってくれる?」
「オーケー。任せてくれ。そうだな、普段よく自分が使っているところは自分で掃除するという作戦だな」
「作戦って程じゃないけど、そんな感じで! よろしくね!」
「ああ。リザードン、お前は少しボールに入っててくれ」

 ダンデがリザードンをボールに戻した。それから、気合いを入れるためなのか両頬を叩いて腕まくりをする。

「何か手伝うことがあったら声をかけてくれ」
「うん、分かった」

 ダンデはうなずいて、キッチンへ向かった。
 さて、私もやりますか……!