感情を持つことによる、果てしなく面倒くさい何か⑧


 時間が経つのがいつもより遅い気がする。ああ、待ち遠しいな。仕事が嫌ってのもあるんだろうけど、早く帰りたい!

 お昼休憩中、ズシから「チョコ交換しよ」と連絡があったので、休憩所で待ち合わせてチョコを交換した。一緒にチョコを買った日に交換すればよかったのかもしれないけど、こういうのはやっぱり、当日にやりたいよね。気分だよ気分。雰囲気。とにかく、そういうの大事。

「あー! これ、買いに行った時気になってたやつだ! ありがと、!」
「ううん、私の方こそありがと! これ可愛いね」

 見れば、休憩室のあちこちで誰かしらがチョコを贈りあっている。女子社員同士が多いかな。
 ズシがちょいちょいと手招きするので少し近付く。内緒話だ。

「カシワギには買ってないんだよね?」
「ないよ! ズシの言う通り、その気もないのに贈るのはダメだなって思ったから……」

 実はここ最近、カシワギくんから「俺、甘い物好きなんだよね」「チョコレート系のお菓子、よく買っちゃうんだよね」みたいなメッセージが届いていたのだ。明らかにバレンタインを意識している。私は話題がバレンタインにならないよう、細心の注意を払ってそれに返信した。

 カシワギくん、ごめん。未だに食事にも行けてなくてごめん。でも、私もカシワギくんとどうなりたいのか、まだよく分かんないんだ……。

「ならよし。あ、でもダンデには買ったんでしょ」
「……買いました。えっと、ほら。異世界に来たんだしこういう行事体験しておくのもいいんじゃないかなーと思ってうんそんな深い意味なんてないよ私もダンデには色々助けてもらってるし異世界文化体験、」
「好きなの?」

 私は全ての動きを止めた。
 まるで推しキャラを語る時のような息継ぎなしのマシンガントークを、ズシはたった一言で止めたのだった。

 私は――動揺を悟られないよう、努めて平然に答える。
 心の、蓋をした部分が、ちょっと揺れた気がした。

「いい人だと思うよ」

 ズシは何か言いたそうにしていたけれど、

「そう。まあ、異世界文化体験。いいんじゃないの?」

 なんて、ニヤリと笑うだけで終わった。

「あ、もうすぐミーティングだわ。ごめん、。休憩中に呼び出して」
「ううん、大丈夫。ズシ、今度またランチ行こうね」

 ズシを見送ったあと、こっそり溜め息をつく。

 追及されなくて、よかった。

 その2文字は忘れたい。
 見えないようにしたい。
 隠しておきたい。

 いっそ、感情なんてなければよかったのに。
 そうしたら私は……、私は……。


***


「ただいまー」
「おかえり!」

 ちょっとだけ残業したけど、概ね予定通りの帰宅。
 ダンデがいつものように玄関まで出迎えてくれた。

 私は肩に掛けたカバンの紐をぎゅっと握る。ちゃんと会社から忘れずに持ってきたんだからね、チョコ。

「お腹空いたー! 今日何?」
「何だと思う? 当ててみてくれ」

 新パターンだ。いつも素直に教えてくれるのに。ダンデが楽しそうなので、私はこのクイズに乗ってあげることにした。

「いい匂い……くらいしか分からな……。いや、えぇとね。玉ねぎ炒めた匂いがする」
「――ということは?」
「ということは!? え? ええと、玉ねぎ使った何か……だよね」

 色々あるよね、そういうの……。

「ヒントないの?」
「ない!」

 何でダンデは、私が考えている様子をニコニコ楽しそうに見てるのかね?

「玉ねぎ炒めたやつ……、カレーじゃないよね。うーん、ハンバーグ、とか?」
「オーケー。答え合わせはキミが着替え終わってからだぜ」
「はーい」

 ダンデ、今日いつもよりテンション高いな? 何かいいことあったのかな?

 手を洗って部屋着に着替えていつものテーブルへ。ダンデが運んできた料理は――、

「今日の夕飯は煮込みハンバーグだぜ!」

 このハンバーグ、形がちょっと不格好だ。ということはダンデが1から捏ねて作ったってこと、だよね……? すごく手間暇込めて作ってくれたんだね。

「ハンバーグじゃん! 当たった!」
「『煮込みハンバーグ』までが答えだから、ハズレだぜ」
「煮込みがないだけでハズレ扱いは解せません!」
「オレがジャッジ役だぜ! ハズレと言ったらハズレだ!」

 やっぱりテンション高いな?

「ダンデ、今日何かいいことあった?」
「……普通だぜ?」

 なんだよ、その間は。しかも目を逸らすし!

「あったんでしょ?」
「ハンバーグの出来がいいからだな、多分。、味はどうだ? 全然食べてないじゃないか」
「え、あ、うん。食べるよ。いただきます」

 お箸でハンバーグを割ると肉汁が溢れ出す。この時点ですでに美味しそう。
 ふーふーと息を吹きかけて、まずはひと口。
 ……柔らかい。噛む必要がないんじゃないかってくらい。

「美味しい! ん……このソース、手作り?」
「そうだぜ。赤ワインとバターを加えて作ったんだ。便利な世の中だな。調べればすぐにレシピが出てくる。文字も勉強したから、レシピもすらすら読めるようになった」

 そう、文字が読めなかったダンデは、今まで私に教えてもらったり、動画を見たりしながらレシピを習得していた。文字を覚えた今は更に様々な料理を作ってくれるようになった。むしろ、私はダンデに料理を教えてもらう側だ。

「今日もありがとう、ダンデ」
「こちらこそ、だ。が美味しそうに食べてくれるから、オレももっと美味しいものを作ろうと頑張れるんだぜ」

 いつものにっこり太陽スマイルを頂いてしまった。
 ま、眩しい……!

 ダンデは私の感想を聞いて安心したのか、ようやく自分も食べ始める。

 あれ、なんか話誤魔化された? ま、まあいいか。可愛い笑顔が見れたので……。

 私、夕飯終わったらプレゼント渡すんだよね? 大丈夫? この笑顔、直でもらったらトキメキで死なない? 致死量じゃない? 生きてられる? 無理じゃない?

「サングラス買っておけばよかったかもしれない」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない」




 夕飯が終わって、私はそわそわしながらゲームをしていた。

 ちょこちょこゲームを進めて、今はスパイクタウンにいる。そう、ポプラさんとマクワには勝ちました!

 私の今の手持ちはこんな感じ。

・ラビフット→エースバーン
・アオガラス→アーマーガア
・エレズン→ストリンダー(ハイなすがた)
・バニプッチ→バニリッチ
・コノハナ→ダーテング
・ヌオー

 スパイクタウンのジムリーダーは、あくタイプの使い手なんだっけ。このまますぐにでもジムに挑戦――いやいや。現実逃避するな。

 私、プレゼントを渡すんでしょ? このままゲームしてたらあっという間に寝る時間になるじゃないか。
 今更ながら緊張してきた。ただプレゼント渡すだけなのに。バカじゃないの?

 寝室にチョコとハンドクリームを取りにいって、それで、それで――!

「なあ、ちょっといいか」
「はっはいい!!」

 ビクリ! 肩が跳ね上がった。

「悪い、驚かせるつもりはなかったんだ」
「いやダンデは悪くない悪くない」

 洗い物を終えたダンデがリビングに入ってくる。――手を後ろに組んで。

「で、何? どうしたの?」
「大した用じゃないんだ。その、」
「うん」

 ソワソワ、ソワソワ。
 ダンデに落ち着きがない。つられて私もソワソワしてきた。何だろう、何か、何かあったの……?

 というか、何で今日に限ってリザードンをボールにしまっているのだろう? こういう時こそリザードンを撫でて心を落ち着かせたかったのにな……!

「あー。今日が何の日か知ってるか?」
「え、またクイズ? 何って、バレンタインデーだよ」
「そう、バレンタインデーだ!」

 ダンデの声がボールのように弾んでいる。

「ガラルにもあるんだ、バレンタインが。家族や友人に贈り物をして感謝を伝える日だ!」

 ダンデは後ろに組んでいた手をパッと前に突き出した。

 そこにあったのは、ラッピングされた紙袋と小さなブーケ。

「オレからキミへのプレゼントだぜ!」

 まったく言葉が出なかった。だって、まさかダンデからプレゼントが貰えると思ってなかったから。

「ずっと前から考えていたんだ。キミにプレゼントを贈りたいって。オレがこちらの世界に来てからキミには随分世話になった。家事は普段からしているだろ? だから、何か形に残る物を贈りたくて……」

 ダンデの言葉が耳に入ってこない。

 きっとこのプレゼントは、ダンデが動画配信で稼いだお金で買ったのだろう。食費はダンデが出してくれていて、家計はとても助かっている。だから、残りの分はダンデのお小遣いなのだ。自分のために使ってくれていいのに。なのに、私のために、こうして――。

「……?」

 私が何も言わないから、ダンデが不安な顔してこちらを覗き込んでくる。

「大丈夫か? 具合でも悪いのか」

 どうやら私、驚きすぎて固まっていたらしい。ああ、あのね。違うんだよ。

「ううん、まさかダンデからプレゼントが貰えると思ってなくて……。びっくりしちゃったよ」

 私はダンデから紙袋とブーケを受け取った。

「ありがとう! とっても嬉しい!」

 ああ、本当に語彙力ってものがない。「嬉しい」。このひと言で表わせない感情が、胸いっぱいに溢れているというのに。

「このブーケのウサギ、可愛いね」

 色とりどりの花に囲まれたウサギの首には、ダンデの瞳の色と同じリボンが巻いてあった。

 ウサギに使われている丸くて白い花の種類は分からないけれど、その他の花は知っている。ガーベラ、カーネーション、カスミソウだ。ポップな色合いで、見てて楽しくなってくる。

「キミ、ゲームでヒバニーを選んだだろ? この花を模した――ウサギ、だったか? ヒバニーに似ていると思ったから、このブーケにしたんだ」

 プリザードフラワーなので、1、2年は枯れずに飾ることができるらしい。

「すごい! 可愛い! 今飾る! あ、でもどこに……テレビ台のとこ?」
、待ってくれ。プレゼントはまだあるんだ。そっちの方を見てから、飾る場所を探そう」

 ダンデに促され、私はもう1つのプレゼントを開けた。そこには――。

「わ、綺麗……」

 もう1つのプレゼントは、四つ葉のクローバーをモチーフにしたバレッタだった。クローバーはラメの入った、ガラスのように透ける綺麗な緑色。アクセントには、やはりダンデの瞳と同じ色のクリスタルビーズがついていた。

 胸が熱くなる。嬉しいが胸から全身に広がって多幸感に包まれていく。

「これ、ダンデが選んだの?」
「ああ」
「ひとりで?」
「そうだぜ」

 ニコニコと笑うその姿は、ひとりでお使いができた子どものようだ。だけど、その笑顔はみるみるうちに曇っていく。

「……もしかして、気に入らなかったか? すまない、オレの今の財力ではこれが精一杯で……」

 ダンデが不安になる気持ちが分かる。私もプレゼント選びには頭が痛くなるくらい悩んだから。

 でも、そんなに慌てなくていいのに。ちょっと可愛いかも。チャンピオンの時はあんなに勇ましくて格好いいのに、今のダンデにはその面影がない。プレゼント選びに悩んで悩み抜いて私の反応を伺っている、普通の人間だ。いや、何をもってして普通というのかは分からないが、今目の前にいるのはチャンピオンお休み中のダンデだ。それは間違いない。

「気に入らないとかないよ。一生懸命悩んで悩んで悩み抜いて、選んでくれたんでしょ? どんな物でも嬉しいよ」

 プレゼントを考えてる間は私のことだけを考えていたんでしょ?

 ポケモン大好きなダンデの関心が、私にちょこっと向けられてるという事実。喜ばないわけがない。

 心の隅っこがくすぐったい。どうしようもなく嬉しくて、でも、恥ずかしくて、今にも走り出してしまいたい気分だ。

「本当に、本っ当にありがとう!」

 言葉でこれ以上言い表せないから、私はとびきりの笑顔をダンデに見せる。

「大切にする!」

 ダンデは動きを止めた。だけどそれもほんの一瞬で、すぐに笑顔が返ってくる。

「ああ」

 さあ、次は私だ。

「ダンデ、ちょっと待ってて」

 私は寝室へ行き、プレゼントを取ってきた。

「はい、これ。先越されちゃったけど、私からもプレゼント」

 今度はダンデが驚く番だった。大きな目を更に大きくして、受け取ったプレゼントを凝視している。

「これは……?」
「私からもバレンタインのプレゼント! 開けてみて!」

 まずはチョコレートの方から。

「ダンデ、バトルの戦略とか考えながら甘い物つまんでたでしょ? だから、ひと口で食べられる物を選んでみた」
「これ、星なのか?」
「そう。詳しくいうと惑星? チョコ選んでる時にね、“ねがいぼし”のこと思い出したんだ。ダンデといえばリザードンではあるんだけど、さすがにチョコはそういうのなくて……。手作りは私の技術が追いつかないから無理。で、悩んでたところにこれ見つけたんだ」

 私が選んだのは、地球、火星、水星といった惑星をイメージしたチョコレートだ。

「あと、この結晶みたいな見た目のこれとか、あとこれも。流れ星が落ちてきたらこんな感じかなって思って。私の中で、ガラルは“ねがいぼし”、つまり星のイメージになっちゃってさ」
「確かに、“ねがいぼし”に支えられている土地だな」
「うん。普段の生活にもダイマックスにも。人にもポケモンにもなくてはならない物だから。そんな世界から来たダンデに贈るのはこれがいいなって思ってさ」
「ああ。……綺麗だ」

 とても柔らかな声音だった。

「ありがとう、。初めて『食べるのが勿体ない』を理解できたぜ」
「ふふ、大事に食べてね」

 続いて、ダンデがもう1つのプレゼントを開けた。
 中身は平たい缶に入ったハンドクリーム。

「ハンドクリームなんて、初めて貰ったぜ」
「だと思った」

 ダンデの手は荒れている。指先も手の甲も乾燥が目立つ。

「洗い物してると荒れちゃうんだよ。冬場は特にそう。だから、これ使ってよ」
「確かに沁みるとは思っていたが、特に気にならないから放っておいてたぜ」
「ポケモンだけじゃなくて、自分のお手入れも大切にしてよね」

 まあ、そういったことに無頓着だから今回ダンデにハンドクリームを贈れたけども。それはそれ。これはこれだ。

「このハンドクリームね。無香料だから強い匂いが苦手な人におすすめなんだって。ダンデは普段ハンドクリームつけないでしょ? 初めてならちょうどいいんじゃないかな。リザードンのお手入れの邪魔にもならないと思う」
「ありがとう、! 早速塗ってみてもいいか?」
「もちろんだよ! というか、むしろ今すぐ使って」

 そんなわけで、ダンデ初めてのハンドクリームデビューである。

「あ、そんなに掬わなくていいんだよ。つけすぎるとベタベタになっちゃうから」
「そういうものなのか? ……伸びがいいな」

 ダンデはぎこちない動作でクリームを塗っていく。塗るだけなのにバトルしてる時の目つきになるの、面白いな……。

「こんな感じでいいのか」
「うんうん。いい感じ」

 あ、そうだ。

「そのハンドクリームね。唇にも使えるんだよ。店員さんが言ってたから間違いないよ」
「へえ……」

 ダンデは人差し指でクリームを掬い、しげしげとそれを眺める。

「ダンデ、唇も乾燥してるからちょうどいいんじゃない? 今塗っちゃいなよ」
「オレの唇、乾燥してるのか?」
「してるしてる。っていうか、自覚なかったの?」

 ダンデは恐る恐るといった様子で唇にもクリームを塗り込んでいく。表情がバトルする時のそれなんだよな。

「鏡貸そうか」
「いや、このくらいならキミに見てもらった方がいいんだぜ。……綺麗に塗れてるか?」
「ん、バッチリ――」

 そこで私は気付く。
 あれ、ダンデと距離、近くない?
 確かめるためだったとはいえ、その、近付きすぎたんじゃない?

?」
「……あ、えっと、」

 ダンデの睫毛が長いな〜、なんて。そんなこと、改めて思ったりなんかしちゃって。
 あ。だめだ、これ。私だめだ。

「ごめん、なんでもない」

 じわりじわりと頰が熱くなる。
 浮かれてた。本当、浮かれてた。
 お互いバレンタインを意識していて、プレゼントを準備していて、

 ――ある意味両想いだとか思ったりして、

「気にしないで、」
、ちょっといいか」

 ダンデの手が、私の唇に触れた。
 心拍数が跳ね上がる。

「っ、え。何」
は全然乾燥してないな」

 興味津々といった様子で、私の唇をじっと見つめる。

「そう?」
「……キミも塗るか? もっとプルプルになるんじゃないか?」
「いや、乾燥してないなら別――んむっ!」

 別にいらない、と言い終える前にダンデが私の唇にクリームを塗り付ける。親指の腹で優しく、丁寧に。

 な、何なの。これどんな状況なの。
 は、恥ずかしいんですが!!

 抗議しようと口を開こうとすれば「静かに」と注意される。ええぇぇ……? これ、ダンデがおかしいのでは? 注意されるべきはダンデじゃないの? 何で?

 心臓の音がうるさい。部屋が静かすぎる。ダンデにまで聞こえていないだろうか。

「……」
「うん……、よし。これでいいな」

 塗り終えたはずなのに、ダンデの手は私の顎に添えられたまま。

 シトリンのような瞳が、私だけを真っ直ぐ見ている。
 私だけを映している。
 いや、観察……してる?

「ダンデ、あの、」

 私、ポケモンじゃないんだから。そう言おうとして、

「小さくて、ぷるぷるで……オレと全然違う」
「……えっと、何の、話……?」
「キミの唇の話だぜ」
「う、ぅぅ……そりゃ、ダンデと私は違うじゃない?」
「可愛らしい。食べてしまいたいって……こういうことか?」
「!?」

 だ、ダンデー!?!? どうした!? ホントにどうしたの!? 食べてしまいたいって何!? 言葉のチョイスがおかしくない!? 比喩ですよね!? え、え、……えっちじゃない!?

「ダンデ、ちょっと離れようよ……、あとじろじろ見られるの恥ずかしいんだってば……」
「……」

 あ、これ話聞いてない。

「ああ、うん。そうだな、つまりはそういうことなんだ」

 ダンデは何かを納得したように呟いた。

「なあ、
「な、何?」
「抱きしめてもいいか?」
「…………はぁ!?」

 エッチョット何言ッテルカ全然分カンナイ!!

「まっ、は、えぇっ!? ダンデ、自分が何言ってるか分かってるの!?」
「分かってるぜ!」

 春の日差しのような笑顔が近付いてくる。
 鼻と鼻がくっつきそうなくらいの距離。

 キスできそうな距離で、
 ダンデは、告げた。





「オレ、キミが好きなんだ!」