彼らはすごい子だなあ、と思いました。
点差はつけられたものの、誠凛も負けじと反撃していく。いい時は4点差まで縮まった! エースの火神君が一旦ベンチに戻るというハプニングがあったものの、誠凛に勝利の兆しが見えてきたように思えた。
――でも、第2クオーター約30秒前から。
桐皇学園の青峰君が試合に出てきたことで、試合の流れは大きく変わることになる。
***
第3クオーターが開始された。
黒子君はベンチに戻った。火神君は青峰君についていくけれど――。
私は解説をしてくれる黄瀬君と緑間君に訊ねた。
「青峰君って……何者なの?」
素人の私でも分かる。青峰君は『何か』が決定的に違う。この試合に出てる選手のオーラというか……。彼がボールを持てば誰も止められない。とてもすごい選手だ。
「……さんは『キセキの世代』知ってるっスか?」
答えてくれたのは黄瀬君だった。
「キセキ……あ、知ってる! バスケが強い……帝光中学のバスケ部レギュラー5人のことだよね? 大きな大会で3連覇したとかって聞いたことあるよ」
バスケには疎いが、ある程度そういった噂は耳に入ってる。中学最強のバスケレギュラー。1人1人が類い希な才能を持つ。中学時代、バスケ部のクラスメイトが嘆いていた。「帝光中の5人は化け物だ。あれじゃあ絶対に誰も勝てない」と。
「それなら話は早いっス。青峰っちもキセキの世代なんス。エースだったんスから」
「! そっか、それなら……」
納得できる。青峰君が圧倒的に強い理由も。そういう才能を持った特別な人なんだって。
そんな彼についていく火神君もすごいと思う。誰よりも高く跳び、青峰君の猛攻を阻止していく――けれど、後一歩のところで止める事が出来ない。
このままじゃ誠凛が負けちゃう! ハラハラしながら試合を見守っていれば、メンバーチェンジのアナウンス。再び黒子君がコートに立った。良かった……黒子君がコートに立つと火神君が活きていくんだよね。この2人ならキセキの世代の青峰君も止められ……あれ? 青峰っち『も』?
「つ、つかぬことをお聞きしますが」
「さん口調おかしいっスよ!?」
「え、えーと黄瀬君も緑間君も黒子君も青峰君も、同じ中学出身で、バスケ部だったんだよね? じゃあ2人ともキセキの世代!?」
「そうっスよ」
黄瀬君があっさり認めた。緑間君は私を見て、
「俺と黄瀬、そして青峰はキセキの世代なのだよ。他にも2人いるが……。黒子はお前にそれを話していなかったのか?」
「うん」
本がきっかけでたくさん話すようになったから、それ以外の話はあまりしてこなかった。
「じゃあ、黒子君はキセキの世代じゃないの?」
「黒子は違うのだよ。ただ、俺らとは違う特異な才能があるのだよ」
緑間君は眼鏡のブリッジを上げると、黒子君について教えてくれた。
青峰君と黒子君の関係。キセキの世代との関係。彼のバスケのスタイル。そして、そのスタイルを貫いてキセキの世代に勝とうとしていることを――。
「そう、なんだ……」
話が終わって感じたのは、言いようのないもやもやした気持ちだった。
なんだか急に黄瀬君と緑間君が遠い存在に思えてきた。そんなにすごい人たちが私とお話して、こうやってバスケ観戦して――何なんだろう、この気持ち。私が傍にいるのが申し訳ない。恥ずかしくなってくる。
「ん。どうしたんスか?」
「ううん何も。びっくりしただけ。同じ高1でもこんなに違うのか、って」
この気持ちは黒子君に抱いたものと同じだ。
何だろう、これ?
「――それより試合! 今は試合だよ!」
まだ何か言いたそうな黄瀬君に気づかないふりをする。
目線をコートへ向けた時。その時ちょうど、黒子君のパスが青峰君に止められたところだった。