文系理系ボツ話※前サイトの雑記から。当時の文のまま掲載しております後編、結婚の話に衝撃を受ける刀剣男士たち。なんかしっくりこないので本編に入れませんでした。名前変換できないので、名前は固定で「橙花」です。追記***(お通夜でしょうか) と、縁起でもない感想を抱いたのは橙花だ。 あれから本丸内を視察した後、メモを取って早々と己の本丸へ帰っていった。門で簡単に行き来出来るのだから、宿泊の必要はないのだ。「明日に課題を」と言い残して、刀剣男士共々帰っていった。 そんなわけで、今は夕食の時間帯だ。橙花の本丸は、出陣や遠征任務がない刀剣男士は、全員集まって食事をするのが決まりである。大きな長テーブルには燭台切光忠とへし切長谷部、そして驚きをロクに仕込むことが出来なかった鶴丸国永が作った食事が並ぶ。歌仙が剥き過ぎたじゃがいもは、肉じゃがともう1品、ポテトサラダへ変身した。まだじゃがいもが残っているので、明日はコロッケになるらしい。 炊きたてのご飯が入ったお櫃が等間隔に置かれ、短刀や脇差たちがわいわい言いながらよそっているが、いつもよりは元気がない。 加州清光も笑顔が少なく、大和守安定も口を一文字にして押し黙っている。鶴丸や光忠はいつも通りだが、石切丸はやけにそわそわと落ち着いておらず、にっかり青江が窘めていた。 愛染国俊は厚藤四郎と頻繁におかわりの競争をするのだが、今日は神妙な顔で箸を進めている。(何が原因でしょうか。やはり、外部の人間には敏感になっているとか? ストレスになってしまったとか……?) 橙花は上座に座って刀剣男士たちの様子を眺めていた。皆、元気がない。橙花が引きこもっていた時も刀剣たちは落ち込んでいたのだが、それを彼女が知る由もない。 遠く離れた席には歌仙が座って食事をしているが、隣に座る小夜に話しかけている様子が見られなかった。もともと小夜は口数が少なく、歌仙が一方的に話をしていることが多いのだが……。互いに一言も発せず食事をしている姿は奇妙に感じた。(これでは料理もいつもより美味しく感じられませんね) どうしたものかと悩んでいたところで、右隣に座っていた今剣が橙花の袖を微かに引いた。「あるじさま」「はい、何でしょう」「あるじさま、本当にあの冷徹とかいうさにわと、けっこんするのですか」「え」 水面に一石投じたように、大広間はしんと静まり返った。この場にいる刀剣男士が訊きたかったその疑問を、今剣が率先して訊ねたのだ。今や、全員が食事の手を止め、全身を耳にして橙花の言葉を待っている。「どうして、今剣君がそれをご存知で」「あっというまにうわさになりましたよ。ぼく、岩融からきいたんです」 橙花はすぐさま岩融を探すが、今は出陣していたことを思い出す。さっと視線を今剣に戻し、「では、岩融さんは誰から聞いたかご存知ですか」「ええとたしか、石切丸です」「石切丸さん」「えっ、私かい? 私は、太郎太刀から婚姻の話を聞いたのだけど」「私は次郎から」「アタシ、鯰尾から聞いたけど? 主、結婚するんだよね?」「俺は乱から聞きましたよ。え、乗り気って聞きましたよ」「乱は今出陣中だぜ。俺っちが乱に教えたんだ。確か俺は、鳴狐から聞いたな」「はい、薬研藤四郎に教えたのは確かに私と鳴狐でございます。めでたいことですので一刻も早くお教えしなければと。え? そのことは共に畑当番だった秋田藤四郎からです」「はい! 僕は五虎退から聞きました」「えっと、その、僕は堀川国広さんから聞いたんです、す、すみませんっ!」「僕、加州君から聞きました」「だって山姥切国広が青ざめてたんだよ!? 近侍サポート役なんだから、当然事情聞くじゃん」「あ、あんた。好きでもない相手へ嫁ぐことが不憫でな……。写しの俺に心配されても迷惑だろうが……」「ええと、……ええと?」 事態が飲み込めたような飲み込めないような。目をぱちぱち瞬かせ、橙花は理解をしようと考えをまとめる。「皆さん、私が冷徹さんと結婚するのが確定だと思ってます? 全然乗り気ではないのですよ」「いざとなれば、ぼくがおっとになります」「今剣君、それはまた嬉しいことですけども、」「はいはい! 俺も俺も!」「ずるくね? じゃあ俺も」「じゃあ私も……」「復讐なら任せて……」「おやおやお盛んだね」「一夫多妻制だったからな、その逆もありといえばありか」「僕はどうしよう」「今剣はどうせ主の乳目当てだろうが!」「だって、あれはいいものですよ」「まあ夫になれば気兼ねなく触れるよな」「ふしだらなことはやめろ!」「というか刀剣男士と審神者の結婚ってありなの」「好きなら良いんじゃないか。俺、大将のこと好きだぜ」「それなら俺だってさ~」「皆さん、あの! あの! 何か重大なことが抜けている気がします!」(なるほど、結婚がどうのこうので勘違いが広まっているのですね! 私は冷徹さんを結婚相手だと考えたこと一度もないのに!) こうして橙花は噂の真相を語る。後で各々の部隊長に連絡しようとしていたことだったが、いい機会だったので全員に冷徹との取り決めを報告した。 事の真相が分かった刀剣男士は俄然張り切ったのだが、 こっそり自室へ引き上げていた歌仙は事の真相を知らないまま、翌日を迎えたのだった。畳む 文系理系小ネタ 2024/03/15(Fri)
※前サイトの雑記から。当時の文のまま掲載しております
後編、結婚の話に衝撃を受ける刀剣男士たち。なんかしっくりこないので本編に入れませんでした。
名前変換できないので、名前は固定で「橙花」です。
***
(お通夜でしょうか)
と、縁起でもない感想を抱いたのは橙花だ。
あれから本丸内を視察した後、メモを取って早々と己の本丸へ帰っていった。門で簡単に行き来出来るのだから、宿泊の必要はないのだ。「明日に課題を」と言い残して、刀剣男士共々帰っていった。
そんなわけで、今は夕食の時間帯だ。橙花の本丸は、出陣や遠征任務がない刀剣男士は、全員集まって食事をするのが決まりである。大きな長テーブルには燭台切光忠とへし切長谷部、そして驚きをロクに仕込むことが出来なかった鶴丸国永が作った食事が並ぶ。歌仙が剥き過ぎたじゃがいもは、肉じゃがともう1品、ポテトサラダへ変身した。まだじゃがいもが残っているので、明日はコロッケになるらしい。
炊きたてのご飯が入ったお櫃が等間隔に置かれ、短刀や脇差たちがわいわい言いながらよそっているが、いつもよりは元気がない。
加州清光も笑顔が少なく、大和守安定も口を一文字にして押し黙っている。鶴丸や光忠はいつも通りだが、石切丸はやけにそわそわと落ち着いておらず、にっかり青江が窘めていた。
愛染国俊は厚藤四郎と頻繁におかわりの競争をするのだが、今日は神妙な顔で箸を進めている。
(何が原因でしょうか。やはり、外部の人間には敏感になっているとか? ストレスになってしまったとか……?)
橙花は上座に座って刀剣男士たちの様子を眺めていた。皆、元気がない。橙花が引きこもっていた時も刀剣たちは落ち込んでいたのだが、それを彼女が知る由もない。
遠く離れた席には歌仙が座って食事をしているが、隣に座る小夜に話しかけている様子が見られなかった。もともと小夜は口数が少なく、歌仙が一方的に話をしていることが多いのだが……。互いに一言も発せず食事をしている姿は奇妙に感じた。
(これでは料理もいつもより美味しく感じられませんね)
どうしたものかと悩んでいたところで、右隣に座っていた今剣が橙花の袖を微かに引いた。
「あるじさま」
「はい、何でしょう」
「あるじさま、本当にあの冷徹とかいうさにわと、けっこんするのですか」
「え」
水面に一石投じたように、大広間はしんと静まり返った。この場にいる刀剣男士が訊きたかったその疑問を、今剣が率先して訊ねたのだ。今や、全員が食事の手を止め、全身を耳にして橙花の言葉を待っている。
「どうして、今剣君がそれをご存知で」
「あっというまにうわさになりましたよ。ぼく、岩融からきいたんです」
橙花はすぐさま岩融を探すが、今は出陣していたことを思い出す。さっと視線を今剣に戻し、
「では、岩融さんは誰から聞いたかご存知ですか」
「ええとたしか、石切丸です」
「石切丸さん」
「えっ、私かい? 私は、太郎太刀から婚姻の話を聞いたのだけど」
「私は次郎から」
「アタシ、鯰尾から聞いたけど? 主、結婚するんだよね?」
「俺は乱から聞きましたよ。え、乗り気って聞きましたよ」
「乱は今出陣中だぜ。俺っちが乱に教えたんだ。確か俺は、鳴狐から聞いたな」
「はい、薬研藤四郎に教えたのは確かに私と鳴狐でございます。めでたいことですので一刻も早くお教えしなければと。え? そのことは共に畑当番だった秋田藤四郎からです」
「はい! 僕は五虎退から聞きました」
「えっと、その、僕は堀川国広さんから聞いたんです、す、すみませんっ!」
「僕、加州君から聞きました」
「だって山姥切国広が青ざめてたんだよ!? 近侍サポート役なんだから、当然事情聞くじゃん」
「あ、あんた。好きでもない相手へ嫁ぐことが不憫でな……。写しの俺に心配されても迷惑だろうが……」
「ええと、……ええと?」
事態が飲み込めたような飲み込めないような。目をぱちぱち瞬かせ、橙花は理解をしようと考えをまとめる。
「皆さん、私が冷徹さんと結婚するのが確定だと思ってます? 全然乗り気ではないのですよ」
「いざとなれば、ぼくがおっとになります」
「今剣君、それはまた嬉しいことですけども、」
「はいはい! 俺も俺も!」
「ずるくね? じゃあ俺も」
「じゃあ私も……」
「復讐なら任せて……」
「おやおやお盛んだね」
「一夫多妻制だったからな、その逆もありといえばありか」
「僕はどうしよう」
「今剣はどうせ主の乳目当てだろうが!」
「だって、あれはいいものですよ」
「まあ夫になれば気兼ねなく触れるよな」
「ふしだらなことはやめろ!」
「というか刀剣男士と審神者の結婚ってありなの」
「好きなら良いんじゃないか。俺、大将のこと好きだぜ」
「それなら俺だってさ~」
「皆さん、あの! あの! 何か重大なことが抜けている気がします!」
(なるほど、結婚がどうのこうので勘違いが広まっているのですね! 私は冷徹さんを結婚相手だと考えたこと一度もないのに!)
こうして橙花は噂の真相を語る。後で各々の部隊長に連絡しようとしていたことだったが、いい機会だったので全員に冷徹との取り決めを報告した。
事の真相が分かった刀剣男士は俄然張り切ったのだが、
こっそり自室へ引き上げていた歌仙は事の真相を知らないまま、翌日を迎えたのだった。畳む